今回は、鎌倉七口と呼ばれる七つの切通しを1日で回るコースをご紹介します。
1.極楽寺坂切通し
2.大仏切通し
3.化粧坂(けわいざか)切通し
4.亀ヶ谷坂(かめがやつさか)切通し
5.巨福呂坂(こぶくろざか)切通し
6.名越(なごえ)切通し
7.朝比奈切通し
の順に回ってみました。
江ノ電極楽寺駅をスタートしたのが午前9時で、最後の朝比奈切通しを抜けてバス停に到着したのが午後3時でした。途中、観光もしながら6時間の行程となりました。
最後は疲れて膝も痛みましたが、鎌倉の歴史や神秘的な自然を満喫できる素晴らしいコースでした。また、大いに達成感も味わうことができました。
最後には、それぞれの切通しを、1.利便度、2.秘境度、3.達成度、の視点から評価したコメントも紹介します。
【コース概要】
(1) スタート地点とゴール地点
スタート地点:極楽寺駅(江ノ電)、ゴール地点:朝比奈バス停(京急バス・神奈中バス)
(2) 順路
① 極楽寺駅・極楽寺坂切通し ~ ② 鎌倉大仏・大仏切通し ~ ③ 化粧坂切通し ~ ④ 亀ヶ谷坂切通し ~ ⑤ 巨福呂坂切通し・鶴岡八幡宮 ~ ⑥ 小町地区・名越切通し ~ ⑦ 朝比奈切通し ~ ⑧ 朝比奈バス停
(3) 距離・所要時間
15km 6時間(観光含む)
【詳細地図を表示したい方は以下をクリック】
グーグルマップ2 名越切通し・法性寺口~朝比奈切通し・鎌倉市十二所側入口まで
※グーグルマップでは、名越切通しおよび朝比奈切通し中の道が表示されないため、地図表示を分割しています。
【写真付き案内】
① 極楽寺駅・極楽寺坂切通し
休日の朝の極楽寺駅です。この時間(午前9時)は観光客もまばらです。
運よく江ノ電カール号に出会えました。慌てて写真を撮りにホームに入りました。
東日本でのカール販売終了により、見られなくなってしまうのが惜しいですね。
極楽洞から出てくる江ノ電です。藤沢方面に向かっています。
極楽寺の茅葺きの山門です。境内の中は写真撮影が禁止されています。極楽寺駅周辺の見どころを味わってしまい、なかなか切通しめぐりがスタートしませんでした(笑)。
極楽寺駅の前を長谷方面に伸びている道が、1つ目の極楽寺坂切通しです。舗装されており、通常の道路となっています。途中に成就院という有名なお寺があります。
坂を下り終えた坂ノ下地区に、お土産でも有名な力餅屋さんがあります。創業300年という老舗で、看板商品の「権五郎力餅」が有名です。この日は開店前だったために買い物はしていませんが、もち米を炊く香りが漂っていました。
名物の力餅についてはこちらをご参照ください。
▶▶▶ 小ぶりだけれど、お腹にズッシリ!力餅屋の力餅|一品逸品
坂ノ下海岸から、鎌倉十井の一つである星ノ井が近くにある虚空地蔵までを「星ノ井通り」といいます。道路の向こうに海が見えます。
② 鎌倉大仏・大仏切通し
長谷駅前を通り過ぎて大仏方面に向かいます。
大仏には既に多くの観光客が訪れていました(午前9時40分)。葉が落ち始めた木々もあり、秋の訪れを感じます。
大仏を後にして、大仏坂トンネル方面に向かいます。
トンネルの手前に大仏ハイキングコースの入口があります。ハイキングコースの中に切通しがあります。
ハイキングコースと切通しの分岐点です。「大仏切通し方面」(写真の奥)に向かって登っていきます。
切通しに至る道は、勾配のある登りと下りが交互に続きます。
大仏切通しの入口に着きました。標柱があります。
左右に大きな石がむき出しになっている壁が続きます。道は細く、急な登り下りを繰り返します。
苔むした大きな岩も点在しており、足場を確保しながら慎重に進む箇所もあります。
大仏切通しの最大の見どころである「火の見下やぐら」への道しるべがありますので、そちらを目指して進みます。
火の見下やぐらに到着しました。スケールの大きなやぐらで、迫力があります。この先を進むと一般道に出ます。一般道を通って次の化粧坂切通しに行くことも出来ますが、先ほどの分岐点に戻り、ハイキングコースを通って向かいました。
③ 化粧坂切通し
分岐点に戻り、標識にある「源氏山公園・銭洗弁財天」方面への道を進んでいきます。木漏れ日の中を歩いていきます。
杉の木立が奥に見える急坂ポイントを通過していきます。初夏には、キツツキが木立の中で巣をつくるために木をつつく音を聞くことができます。
山道を抜けると、海が見える一画があります。逗子方面の海を臨みます。
標識が見えてきました。葛原岡神社方面に向かいます。
葛原岡神社に到着しました。後醍醐天皇に仕え、鎌倉幕府の倒幕を図るも捉えられ、葛原岡で処刑された日野俊基(ひのとしもと)を祀ります。明治維新後になると、倒幕の功労者として評価されるようになり、神社が建てられました。
葛原岡神社の本殿です。
境内には男石・女石からなる「縁結び石」が置かれており、恋愛成就の神社として人気があります。
絵馬はハートの形をしています。
葛原岡神社の参拝者用駐車場からは、鎌倉の山並みを眺めることができます。
駐車場から延びる「あじさいの小径」を進みます。
ほどなく、化粧坂切通しへの標識が見えてきました。すぐ先に切通しがあります。
葛原岡方面からは下り坂となります。急で、段差の大きい下り坂です。距離はさほどでもありませんが、気を付けて進んでください。
急な下り坂が終わるとなだらかなカーブの下りになります。
苔が生え、歴史を感じさせる壁面を見ながら進みます。
切通しを下り終えました。この時、時刻は午前11時。スタートから2時間が経過していました。
④ 亀ヶ谷坂切通し
化粧坂切通しを過ぎ、扇ヶ谷地区を歩いて亀ヶ谷坂切通し方面を目指します。
横須賀線のガードをくぐった先に標識がありますので、それに沿って進みます。
途中、源頼朝の娘である大姫の守本尊を祀る岩船地蔵堂があります。海蔵寺が管理しているため海蔵寺・岩船地蔵堂と呼ばれます。
亀ヶ谷坂切通しに入りました。登り坂が続きます。
亀ヶ谷坂切通しは生活道路としてもつかわれており、自転車やバイクでの通行ができます。
切通しを抜けて県道21号線に出ました。県道から見た切通しです。写真の右側は長寿寺で、鎌倉公方の足利基氏が父・尊氏を弔うために建立したお寺です。
⑤ 巨福呂坂切通し・鶴岡八幡宮
県道21号線を鎌倉方面に進みます。建長寺の前を過ぎ、鶴岡八幡宮を目指します。
鶴岡八幡宮の「車祓処(くるまはらいどころ)」に着きました。道路を挟んで反対側の道に入っていきます。
巨福呂坂切通しに至る道を進みます。
巨福呂坂切通しの標柱がみえてきました。
巨福呂坂切通しの様子です。道の片側に、民家が建ち並んでいます。
途中、青梅聖天社があります。南北朝期につくられた双身歓喜天(かんぎてん・仏教の守護神である天部の一つ)を祀ります。病気になった将軍(三代・源実朝)が季節はずれの「青梅を食べたい」といったのをうけ、家臣が社で祈願すると梅の木に実がついたという伝承があります。
階段を上ると、小さな御堂がひっそりと佇んでいます。この辺り一帯は梅の名所として知られています。
切通しに戻ります。道祖神などが祀られています。
巨福呂坂切通しの終点です。この先は民家があり、ここで行き止まりです。時刻は午前11時45分でした。
鶴岡八幡宮を訪ねてみると、小笠原流による「三三久手挟式(さんさんくてはさみしき)」という弓矢の儀式が奉納されていました。
この日も、鶴岡八幡宮は多くの参拝客で賑わっていました。
⑥ 小町地区・名越切通し
鶴岡八幡宮を後にして、若宮大路を鎌倉駅方面に進みます。二の鳥居の近くで左折し、小町地区に入ります。
小町地区を散策します。この辺りには、日蓮宗のお寺が集まっています。
本覚寺の山門が見えてきました。日蓮宗の本山で、身延山の久遠寺にあった日蓮の遺骨を分骨したため「東身延」とも呼ばれています。
山門をくぐってすぐ右手に夷堂(えびすどう)があります。この夷堂は、山門の前の場所に源頼朝が建てた後、本覚寺の創建時に境内に移されたとのことです。正月の「初えびす」、1月10日の「十日戎(とうかえびす)」は多くの人出で賑わいます。
本覚寺の本堂です。
本覚寺の門前の滑川には夷堂橋が架かっています。
橋を渡って進むと、同じく日蓮宗の妙本寺に着きます。妙本寺は、日蓮宗最古の寺院です。比企能員(ひきよしかず)の末子である比企能本(ひきよしもと)が開基とされています。この辺り一帯は、比企氏の一族が住む谷戸でしたが、「比企の乱」により一族が滅ぼされた後、能本が日蓮に出会い、自分の屋敷を献上したのが妙本寺の始まりとされています。
境内はとても広く、石段を登っていきます。
大きな本堂です。
妙本寺を出て逗子方面に進むと、「ぼたもち寺」と呼ばれる常栄寺があります。日蓮宗の尼僧(「浅敷の尼」といわれる)が、処刑のため刑場に引かれて行く日蓮に胡麻ぼたもちを捧げた後、日蓮が刑を免れたことから「御首継ぎに胡麻の餅」として有名になったお寺です。
常栄寺の本堂です。
さらに進むと、大町・八雲神社があります。厄除け開運の神社として知られており、祇園山ハイキングコースの始点にもなっています。
県道311号線に出ました。葉山方面に向かいます。
途中、日蓮の「立正安国論」で有名な安国論寺があります。
本堂です。境内には、日蓮の草庵の名残があり、雰囲気の良いお寺です。
311号線に戻り、横須賀線の踏切を渡ったところに、名越切通しへの標識があります。
道なりに行くと踏切がありますので、渡ります。
踏切の先に、標識があります。
住宅の間を抜けて、切通しに至ります。
切通しの手前では、横須賀線の線路を見下ろすことができます。
いよいよ名越切通しの本格的なスタートです。
山道を登っていきます。
途中、「まんだら堂やぐら群」への道しるべがあります。
まんだら堂やぐら群です。公開される時期が限られており、遠くからの撮影です。次回は2017年10月21日から12月11日の予定です。公開に合わせて、是非、近くで見たいものです。
大きな岩の間を抜けていきます。
出口に着きました。時刻は午後1時30分で、スタートから4時間半が経過していました。ちなみに、こちら側は「亀ヶ岡団地入口」といわれる場所です。
⑦ 朝比奈切通し
名越切通しを抜けた地域は、逗子市の小坪地区です。高台にあり、鎌倉・横浜の山並みがきれいに見えます。
小坪地区の路地を下っていきます。
県道311号線に出ました。一度、鎌倉方面に向かい、横須賀線の線路を渡ることができる踏切まで移動します。
踏切を渡り、「久木(ひさぎ)ハイランド入口」交差点を左折します。
久木地区の桜並木を歩いていきます。
金沢街道と交わる明石橋交差点に出ました。横浜方面(写真右側)に進んでいきます。
しばらく進むと、朝比奈切通しへの標識が見えてきました。
脇を流れる大刀洗川沿いに進んでいきます。大刀洗川の由来は、源頼朝の命により上総介(かずさのすけ)広常を誅殺した梶原景時が、刀をこの川の水で洗ったこととされています。何とも武家の都らしいエピソードです。
大刀洗川河岸にはやぐらが見えます。
朝比奈切通しへの入口にたどり着きました。
朝比奈切通しを進んでいきます。
朝比奈切通しには、小さな流れが続いており、ちょっとした沢登りの雰囲気が味わえます。ぬかるみが多いため、服装・靴は汚れても良いものを着用ください。
落石の現場もありました。
大規模なやぐらが見えます。
やぐらをすぎると流れはなくなります。ここから先は、杉林が広がる中を歩いていきます。周囲はおどろくほど静かです。
途中、熊野神社への分岐点があります。神社へ向かいます。
杉林の奥に境内が見えます。
境内には神秘的な雰囲気が漂っています。
切通しに戻り、切り立つ壁の間を歩いていきます。
横浜側の出口に近づきました。切通しの上を横浜横須賀道路が通っています。
出口に到着です。横浜側入口からみた切通しです。
⑧ 朝比奈バス停
切通しを後にして真っ直ぐ進み、県道23号線に出ました。ここからはバスに乗って帰ります。
すぐ近くに朝比奈バス停があります。京急バスだと鎌倉駅に、神奈中バスだと大船駅に出ます。時刻は午後3時でした。スタートから6時間の行程でした。大変お疲れ様でした。
【推奨コメント】
切通しだけでなく、有名な寺社も回ることができるコースです。体力に自信のある方には、6時間かけて回る価値は十分にあります。ただし、筆者の場合は、途中から膝が痛くなってしまいました。7か所全部ではなく、体に無理のない範囲で数か所を回ってみることもお勧めです。また、アクセスしやすい切通しを選んで、観光ルートに組み込んで行くこともお勧めです。
【各切通しの評価】
あくまでも筆者の私見ですが、利便度、秘境度、達成度という視点から各切通しを評価してみましたので、ご参考ください。
評価の視点
利便度:アクセスの良さ、秘境度:古の雰囲気や自然を感じさせる、達成度:踏破した後に得られる達成感
評価の基準
最高:各視点で★3つ(☆0)、合計★9つ(☆0)
最低:各視点で★0(☆3つ)、合計★0(☆9つ)
1.極楽寺坂切通し
利便度:★★★、秘境度:☆☆☆、達成度:☆☆☆、合計:★3つ
2.大仏切通し
利便度:★★☆、秘境度:★★☆、達成度:★☆☆、合計:★5つ
3.化粧坂切通し
利便度:★★☆、秘境度:★☆☆、達成度:★☆☆、合計:★4つ
4.亀ヶ谷坂切通し
利便度:★★★、秘境度:☆☆☆、達成度:★☆☆、合計:★4つ
5.巨福呂坂切通し
利便度:★★★、秘境度:☆☆☆、達成度:☆☆☆、合計:★3つ
6.名越切通し
利便度:☆☆☆、秘境度:★★★、達成度:★★★、合計:★6つ
7.朝比奈切通し
利便度:★☆☆、秘境度:★★★、達成度:★★★、合計:★7つ
(記:2017年10月2日)